感染症よもやま話

2018 01/18 若いお医者さんへ 子育て中のママパパへ

医者の子どもはカゼ知らず?

ヒトは成人するまでに150種類前後のカゼ(鼻水が少しでる程度の軽い鼻カゼから熱が数日続くような比較的重症のカゼ)に罹ると言われています。このカゼは寒冷刺激によるものもありますが殆どはウイルス感染でウイルスに暴露されるたびに抗体ができてカゼに罹りにくい体になっていきます。そのため保育園などの集団生活をはじめるころにはお互いにうつし合いをして、クリニックの常連になって月に3~4回顔を見せてくれる子どもも珍しくありません。仮にカゼに罹らないようにカプセルの中でウイルスと接触なしに育てたなら、成人になってから一度にいくつもの病気にかかって大変なことになるでしょう。子どものカゼは成長するために避けられないものです。

上品な教養のありそうなお母さんが3歳くらいの男の子をつれて度々受診されました。いつも。症状は軽く、「朝鼻水がでました。咳をします。」などの軽い訴えだけです。子どもは元気そうで顔色もよく、クリニックでも走り回っています。その度に対症療法のクスリを投与していましたが、その子が高い熱をだした時のことです。「この子は少しでも体の調子が悪いと先生のところに連れてきて、今もカゼのクスリを飲んでいるのに、どうして熱がでるのですか。」と詰問口調になりました。この時鈍感な私はやっと気づきました。お母さんはお医者さんに診てもらっていれば病気にならない、母親として少しでも子どもに変調があれば受診していた、このようにすれば病気になるはずがない、熱が出れば医者が悪いのだと。この論法からいくと医者の子どもはカゼ知らずになります。いつも医者がそばにいる環境にいてもカゼに罹るのは避けられません。

自分にとって嫌な事柄が起きるのは自分が悪いのではなく、誰か他人に落ち度があったから、あの人の失敗がなければこんなことにならなかった、全て他人の責任と考える風潮があるのではないでしょうか。世の中には病気、貧困など避けたいものは色々あります。努力して回避しようとしますが、避けることが出来ないことがおきた時にはそれを甘んじて受け入れる心の余裕も大事だと思います。

上品なお母さんはその後来られません。私の説明が悪かったのか、聞く耳を持たないかたくなな、批判精神旺盛な人だったのか今となっては分かりません。

キリスト者保育連盟(東京都新宿区西早稲田2-3-18-75)発行の月刊誌 『ともに育つ』第477号(2008年12月1日)に寄稿、掲載されました。