ミリタリールック
自衛隊の屈強な若者が迷彩柄の装備に身をつつみ、地震や洪水などの災害現場で身を挺して多くの人々を救助している様子をみると、自分の子どももあのように頼もしい人になって欲しいと思うためでしょうか、クリニックでミリタリールックの子どもをよくみかけます。
アパレル用語ではこの迷彩柄の素材で作ったジャケット、パンツ、シャツをミリタリールック(別名アーミールック)とよび季節に応じたバージョンもあり、タウンウェアとして若者に親しまれているそうです。広辞苑で迷彩を調べてみると「艦船、飛行機、戦車、火砲、戦闘服などに黒、白、青など数色を不規則に塗り、敵の眼を欺瞞する一手段。建造物、路面などにも施すことがある。カモフラージュ」となっています。要するに迷彩柄というのは出来るだけ目立たない、背景と区別しにくいように特別に工夫された模様といえます。
ここで少し想像してみて下さい。夕暮れ時、数人の子どもが歩道でおしゃべりしながら歩いています。車道との境には人の腰くらいの高さの街路樹が植えられ、道路はよく整備されています。一人のミリタリールックの子どもの母親が反対側の歩道をこちらに歩いてきました。彼は気づいて植木の間を抜けて道路を横断しようとします。クルマを運転する人にはこの恐ろしさがよく分かるでしょう。突然、植木だと思っているものが動きだして目の前にでてくる、まさにミリタリールックは植木の間に隠れている人間を識別しにくいようにした服装ですから。
お母さんは季節、その日の天気、温度、行事などによって子どもにどんな服装をさせるかを考えなければなりません。こざっぱりしていて、寒くなく、暑くなく、華美になり過ぎず、動きやすいことが原則ですが、現代のようなクルマ社会では運転者から目立つ服装にするということも大事な事だと思います。
クリニックに来られるお母さんのなかにはファッション雑誌から抜け出してきたような美しい服装の方もいらっしゃいます。頭から足の先まで完璧。うつむけば背中は丸出し、もちろん手にはネールアート。おむつを代える時にウンチがついたらどんな顔をして手を洗うのかな、もう少し実用的な方がいいのにと私のような意地悪医者はぶつぶつ言っています。子どもにも、子育て最中のお母さんにもTPOに即した服装が必要だと思います。
キリスト者保育連盟(東京都新宿区西早稲田2-3-18-75)発行の月刊誌 『ともに育つ』第476号(2008年11月1日)に寄稿、掲載されました。