感染症よもやま話

2019 02/11 若いお医者さんへ 子育て中のママパパへ

第2回 ボツリヌス中毒 ━辛子レンコン━ 

日本では1977年ころまで北海道、東北地方の特産である魚の発酵食品『いずし』によるボツリヌス中毒が発生していましたが自家製の『いずし』が作られなくなってからほとんど見られなくなりました。しかし、1984年(昭和59年)日本におけるボツリヌス中毒として非常に有名な事件が発生しました。患者は6月14日から28日の2週間に13都県市にまたがって発生し、患者31名、死者9名に達する大事件でした。(IMG_20190131_0001)原因食品は熊本県の郷土料理として有名な辛子レンコンで、原料である辛子粉にボツリヌス菌の微量汚染があり、これを使用した製品が真空パックされ、さらに、流通過程での常温保存が毒素産生に最適であったため発生した悲劇と考えられれています。この事件での教訓は患者さんを診察時にボツリヌス症を疑う目を持っていなかったこと、鑑別診断にボツリヌス症がなかったことと考えます。前回お話した映画では軍医が、素人の船員が知らせてきた情報だけでボツリヌス症と診断し治療法を指示したこととはおおきな隔たりがあります。九州のある赤十字病院での臨床経過を示します。 IMG_20190131_0002 典型的なボツリヌス中毒の症状を呈しているにも関わらず、診断が遅れると抗血清を投与しても死に至ることを示し、映画のようにうまく治療ができるとはかぎりません。