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2018 03/25 お知らせ 子育て中のママパパへ

カゼはどんな病気? どんな薬があるの?

小児科の外来はいつも騒然としています。診察室に入って来るとすぐに泣き出して、お猿さんのようにお母さんにしがみついて離れない子、そうかと思うと元気一杯で診察机の上にある聴診器や、懐中電灯に手を伸ばしたり、検査伝票の束を床にまき散らす子など千差万別です。
お母さんの中には気を使って子供に注意してくれる場合もありますが、子供はすきな事をするのが当たり前、めくぢら立てて注意することはないでしようと言う態度で知らない顔を決め込む人もいます。
たまに目にあまる元気なお子さんがいてこちらとしても極めて控えめに注意することがあるのですが、逆にあなたは小児科の医者なのにこんなことも我慢出来ないのかと睨みつけられたりします。

私の以前勤務していた病院は約600床のかなり大きな病院で、毎日小児科外来に多くの患者さんが来られます。患者さんの病気の8~9割はいわゆる「カゼ」です。
カゼの原因はウィルスで、その種類はそれも200種類以上あり、夏に多い夏風、冬の学級閉鎖で有名な流行性感冒(インフルエンザ)、手足に小さな水泡のできる手足口病などもカゼにふくまれます。その症状もいろいろで、呼吸器症状として、咳、鼻水だけの軽いものから、胃腸の調子が悪くなって、下痢、嘔吐から脱水症になったり、まれに脳にまでわるさをして髄膜炎を起こすこともあります。
一部のウィルスには有効な薬がありますが、大部分のカゼには直接効く薬は無く、咳には咳止め、熱には解熱剤などの極めて当たり前の治療法しかありません。抗菌薬を使うことはほとんどありません。いいかえればカゼという診断がつけば、家でおとなしくさせて、口あたりのいい、栄養のある食べ物を与えておけばそれで治ってしまうはずなのです。

ただ、いくつかの病気のなかにはカゼのような症状ではじまる場合があり、また普通のカゼでも余病として中耳炎、副鼻腔炎、肺炎などを合併することもあり、病気の初めの時は毎日診察したり、また病気の進行の状態によっては血液、尿、レントゲン写真などの検査をして、カゼだからといって軽く診ることは決してありません。
一人の患者さんの診察をして、診察といっても診察室に入って来る時の歩き方、顔の表情、お母さんの態度をはじめ患者さんの聴診、打診、視診などあらゆる、得られる情報をもとに、私なりにかなりの自信をもってカゼと診断して患者さんに話しをします。

「カゼですね。お薬をわたしておきますからこれを飲ませて様子をみてください。
食欲もあまりないでしょうから、お子さんの好きそうな、口あたりのいい食べものを作って、暖かくして休ませて下さい。お家に熱さましはありますか?」

「座薬ですか?」

「熱がでた時に使う、熱を下げるお薬をお持ちですか?」

「だから座薬でしょう?」

この会話の意味を皆さんは理解できるでしょうか、私の立場としては座薬には喘息に使うものもありますし、痛み止めもありますし、痔の薬もありますし、とにかく座薬の全部が解熱剤ではないのですから、うかつに家にある座薬を使ってもいいですと答えて、おばあちゃんのリウマチの痛み止めの座薬を赤ちゃんに使われては大変だと考えるのです。それで次にこのように質問します。

「今、家にある座薬はどこでもらったのですか?」

「この前カゼで近所のお医者さんにかかった時にもらいました。」

「そのお医者さんはその座薬をどんな時に使うようにいいましたか?」

「熱がでた時です。」

それなら最初から熱さましは家にあると答えてくれればいいのです。
『この分からず屋』しかしそんな事を考えているなど顔にださないようにしながら、

「それでは熱がでて、ぐったりして、元気がない時には前のお医者さんでもらった熱さましの座薬を使って下さい。」

たかが解熱剤についてだけで、これだけの会話をするとこちらとしても、この母親は何を考えているのかといい加減いやになりますし、それと同じ位、母親の方もおそらくこの医者はなんと堅苦しい人なのだろうと思っていることでしょう。こんな患者さんは早く帰ってもらおうとしていると、

「先生、心配ありませんか?隣の家の子供が丁度この子と同じように熱が出て1週間ほどしてから肺炎で入院したのです。」

「今、診察したところではカゼで、肺炎の所見はありません。」

「それなら心配ありませんね。」

私にはお母さんの気持ちはよくわかるのです。カゼだから心配ありませんと言ってもらえれば安心できる、安心させて欲しいと思うのでしょう。
しかし現実の問題として子供は熱をだし、だれがみても健康ではないのです。先にお話したようにカゼといっても重い病気のはじまりの可能性は否定できません。
自分で言うのは少し気がひけるのですが、小児科の医者としての経験から私がカゼと診断すればおそらく9割5分位は正解だろうと思っています。しかし不幸な結果には到らなくても、重大な病気を見落とすことがたまにある事も知っています。ですから自分に正直であるならなおさら、間違いなく治りますとは言えないのです。このような場合はできるだけ分かりやすい言葉でカゼの説明をして、もう少し病気の様子をみましょうと話します。

本当に「心配しなくてもいい状態、心の平安な状態」は診察を受けた医者に求められるものではないかと思います。
医者も自分が持っているすべての技術、知識を使って診察、治療をしますがそれでも不幸な転帰をとることは必ず有り得るのです。

母親も医者も、自分達にできることをすべてした後は何が起こってもそれは喜んで受け入れます。例えそれが耐えられない位悲しいことでも受け入れます。そのような考え方があって初めて「平安な心」が得られるのだと思っています。
カゼのように軽い病気の時にはこんな深刻なことは考えませんが、もう死期がせまっている時にはいつも家族が「平安な心」がもてるように願っています。