感染症よもやま話

2018 01/18 子育て中のママパパへ

大泣きした女の子

予防注射を受けにきて、注射が終わって待合室に出てからも泣き止まなかった女の子の話です。

3歳9ヶ月の裕美子ちゃんはお母さんに連れられてにこにこしながら診察室に入ってきました。
カゼを引いた時には聴診器を当てられ、あーんと口を開けてノドを診てもらって、ベッドでお腹を触ってもらって、もう帰ってもいいよと言われるまでベッドの横に置いてあるおもちゃで遊ぶのがいつものパターンだったのです。しかし、今回は注射器が出てきてお母さんと看護士さんに押さえつけられて注射をされてしまったのです。注射器を見たとたん顔が引きつってお母さんを叩く、蹴る、大声で泣く、注射が終わって痛くなくなっているのに泣き止みません。地団駄を踏んで、待合室に連れ出してからも泣いています。
少し落ち着いてからお母さんに『今日は注射をすると言って連れてきたの?』 と聴くと「家を出る前に注射をすると言うと嫌がって来ないので言わないで連れてきました。」との答えでした。

小児科では多くの子ども達に注射をします。どの子も痛い時には泣いたり、暴れたりしますが、終わってからお母さんから「よく頑張ったね、偉かったね」と慰められるとすぐ泣き止むし、私にもバイバイと手を振って帰る子もいます。いつもは裕美子ちゃんも素直でいい子ですが、今回はお母さんにウソをつかれたこと、痛いことよりもお母さんが自分を騙したことが悔しくて大暴れをしたのだと思います。親は自分勝手に子どもを扱う、まだ小さいのだから説明しても分からないだろうと思いこんで、悪気はなくても、自分に都合のいいように理屈をつけて子どもに接することがあります。何歳までは騙してもいい、それ以上は本当のことを言わなければいけないと線を引くことは出来ません。生まれた時からお母さんは子どもの味方で、どんな時にも信頼できる存在だと信じられる子どもは精神的に安定しているように思います。

一ヶ月くらい経ってから裕美子ちゃんがカゼを引いて受診しました。やはり不安そうに「今日は注射をしないの?」と何度もお母さんに聞きました。私も手をひらひらさせて『注射器はないよ、なにも持ってないよ』と言いながら診察をしました。お母さんは少し悲しそうな顔をしていましたが、お母さんにとってはいい勉強になったことでしょう。きっといいお母さんになると確信しています。

キリスト教保育連盟 発行の ともに育つ (2012年3月号)