感染症よもやま話

2018 01/18 若いお医者さんへ

この病気は治らないのですか

広辞苑『健康』を調べると 『体にわるいところがなく心身がすこやかなこと』となっています。

肺炎を治療して、薬を飲まなくてもいい状態になれば病気が治ったと感じます。
それでは『治療を継続すれば健康な状態を保つことができる』は病気と考えるのでしょうか。

1998年長野冬期オリンピック 500mスピードスケート金メダリストの清水宏保さんは小さい時から喘息に悩まされ、普通の子と同じ生活ができなかったそうです。しかし、運動神経が優れ、強い精神力があった事、そして新しい治療法を取り入れることでスポーツ選手として最高の名誉を得るまでになりました。

喘息発作は色々な刺激物(家のホコリなどのアレルゲン、気温の変化、精神的ストレス、など)によって発作的に気道の分泌物が増加し、気道を取り囲んでいる筋肉が収縮し、気道が狭くなって呼吸困難を起こす状態です。治療は気道を広くし、分泌物を減らす治療が行われていましたが発作を抑えることが主眼とされ、発作を起こさせないようにすることは困難でした。オーケストラのホルン奏者が演奏中に、舞台の上で発作止めの薬をスプレーで吸入して演奏を続けているのを見たことがありましたが、本人はとてもつらい思いをされていたことと思います。

最近、喘息は慢性の気道炎症が原因と考えられています。ステロイドの炎症を抑える作用は昔から知られていましたが、内服すると見かけはよくなるのですが副作用が強く出て長く使えませんでした。そこでステロイドの構造と投与方法を変えることによって局所(気道)の炎症だけを抑え、全身作用の少ない吸入療法が導入されました。気道の過敏性が低くなると発作の回数が減る、発作が少なくなると過敏性が低下する、いい循環がはじまります。喘息という病気は医師の指導を守れば、治療を継続しながらですが、普通の人と全く同じ生活をすることができると言えるようになりました。

患者さんにこのような話をすると「薬で発作を抑えているだけで病気は治っていないのでしょう。やはり薬を続けることは怖いです」と言って自己判断で治療を止める人もたまにみかけます。
しかし、『治療を継続すれば健康な状態を保つことができる』は最善とは言えないまでも、病気とつき合う方法としてはいい治療だと思います。 

キリスト教保育連盟 発行の ともに育つ (2012年1月号)